進行・再発子宮体癌の一次薬物療法を「TC療法単独」から「免疫チェックポイント阻害薬の上乗せ」へと変えた試験の一つ、KEYNOTE-868試験(NRG-GY018試験)について、実臨床で使える形にまとめました。

1. この試験が考案された背景
進行期または再発性の子宮体癌に対する一次薬物療法は、歴史的にパクリタキセル+カルボプラチン併用療法(TC療法)が標準治療とされてきた。一方、ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)/高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の子宮体癌は腫瘍変異量が多く免疫チェックポイント阻害薬が効きやすいことが知られており、またMMR機能保持(pMMR)の症例でも化学療法との併用で免疫反応を高められる可能性が考えられていた。
そこで「TC療法に抗PD-1抗体ペムブロリズマブを上乗せすることで、MMR状態にかかわらずPFSを延長できるのではないか」という仮説を検証するために計画されたのが、NRG-GY018試験(Merck社の試験番号ではKEYNOTE-868試験)である。
2. 試験概要
対象
- 18歳以上の子宮体癌患者。新規診断のⅢ期またはⅣA期で測定可能病変を有する症例、または測定可能病変の有無を問わないⅣB期または再発例
- 国際共同試験として、米国・カナダ・日本・韓国の395施設で登録。計810例(日本人7例を含む)をランダム化。MMR状態によりpMMR集団(588例)とdMMR集団(222例)に分けて解析(MSD Connect掲載の国内承認時評価資料に基づく)
試験デザイン
国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第Ⅲ相試験。1:1でペムブロリズマブ群とプラセボ群に割り付け。
| ペムブロリズマブ群 | プラセボ群 | |
|---|---|---|
| 併用期 | パクリタキセル(175 mg/m²)+カルボプラチン(AUC 5)(TC療法)+ペムブロリズマブ(200 mg)(3週毎×6サイクル) | TC療法(パクリタキセル175 mg/m²+カルボプラチンAUC 5)+プラセボ(3週毎×6サイクル) |
| 維持療法期 | ペムブロリズマブ(400 mg、6週毎、最大14サイクル=約24か月間) | プラセボ(6週毎、最大14サイクル) |
- サイクル6終了時にSD(安定)またはPR(部分奏効)で測定可能病変が残存する場合、治験担当医師の判断で併用期をサイクル10まで継続できた
- パクリタキセルに対する過敏症反応で継続できない場合は、ドセタキセル(日本では60–70 mg/m²)の使用が許容された
- 画像診断は最初の9か月間は9週間隔、その後は12週間隔で実施。疾患進行、許容できない有害事象の発現、または投与完了まで継続
- ※ 用量は試験での設定(カルボプラチンのAUCはmg/mL/min)。実臨床での用法・用量は電子添文・適正使用ガイドで必ず確認すること。

主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)で、dMMRコホートとpMMRコホートそれぞれで評価された。副次評価項目に全生存期間(OS)などが設定された。
3. 結果
主要解析(PFS、中間解析:データカットオフ2022年12月)
| 集団 | ペムブロリズマブ群 | プラセボ群 | ハザード比(95%CI) |
|---|---|---|---|
| dMMR | PFS中央値:未到達(30.7–NE) 12か月PFS率:73.0%(62.0–81.3) | PFS中央値:8.3か月(6.5–12.3) 12か月PFS率:40.0%(29.3–50.4) | 0.34(0.22–0.53) |
| pMMR | PFS中央値:13.1か月(10.6–19.5) 12か月PFS率:52.0%(43.8–59.5) | PFS中央値:8.7か月(8.4–11.0) 12か月PFS率:29.5%(22.4–37.0) | 0.57(0.44–0.74) |
dMMRでは病勢進行または死亡のリスクが約66%、pMMRでも約43%低下し、MMR状態にかかわらずペムブロリズマブの上乗せによるPFSの有意な改善が示された。
※ 上記はMSD Connect掲載(国内承認時評価資料)の数値である。NEJM 2023本文では、dMMRで約70%、pMMRで約46%のリスク低下(HR 0.30、0.54)と報告されており、解析対象集団・解析の扱いの違いにより数値が異なる。
全生存期間(OS)の解析(MSD Connect掲載データ)
OSは副次評価項目である。中間解析でPFSの有用性が認められたため、データモニタリング委員会が試験の中止と盲検化解除を推奨し、以降は盲検が解除された状況下で試験が行われた。OSは、中間解析時点では多重性を調整した正式な検定は計画されていなかった。
| 集団・解析時点 | 死亡イベント数(ペムブロリズマブ群 vs プラセボ群) | OS中央値(95%CI) | ハザード比(95%CI) |
|---|---|---|---|
| pMMR 中間解析(2022年12月6日) | 45/294例(15.3%) vs 54/294例(18.4%) | 27.96か月(21.42–NE) vs 27.37か月(19.52–NE) | 0.79(0.53–1.17) |
| pMMR 更新解析(2023年8月18日) | 77/298例 vs 92/299例 | 28.9か月(26.8–NE) vs 28.7か月(24.0–34.6) | 0.80(0.59–1.08) 名目上のp=0.0683 |
| dMMR 中間解析(2022年12月16日) | 10/110例(9.1%) vs 17/112例(15.2%) | 未到達 vs 未到達 | 0.55(0.25–1.19) |
| dMMR 更新解析(2023年8月18日) | 17/110例 vs 27/112例 | 未到達(NE) vs 42.7か月(42.7–NE) | 0.57(0.31–1.04) 名目上のp=0.0323 |
OSの点推定値はいずれの集団・解析時点でもペムブロリズマブ群に有利な方向だが、信頼区間が1をまたいでおり、統計学的な有意差は示されていない(更新解析のp値は名目上のもの)。死亡イベント数がまだ少ないため、今後のアップデートが待たれる。
【用語メモ】死亡イベント数とOSの解釈
生存解析では、解析時点で実際に発生した死亡(イベント)の数が少ないほど、ハザード比の信頼区間が広く、結果が今後変動しやすい。本試験のdMMR集団では、更新解析でも死亡が17例(ペムブロリズマブ群)と27例(プラセボ群)にとどまり、OS中央値も未到達であるため、OSの結論は暫定的と考えるべきである。
PD-L1発現別の探索的PFS解析
PD-L1はIHC 22C3 pharmDx(Agilent)で測定し、中央判定でCPS(combined positive score)1以上を陽性とした。PFSのハザード比は以下の通り(中間解析、データカットオフ2022年12月。MSD Connect掲載)。
| CPS≧1 | CPS<1 | |
|---|---|---|
| pMMR | 0.59(0.43–0.80) | 0.44(0.26–0.75) |
| dMMR | 0.27(0.16–0.47) | 0.30(0.11–0.83) |
いずれのサブグループでもハザード比は1を大きく下回っており、ペムブロリズマブをTC療法に追加する有効性は、PD-L1発現の結果によらない可能性が示唆される。ただしpMMR集団ではCPS陽性群(0.59)より陰性群(0.44)の方がハザード比が低い(=一見効果が大きい)という逆転が生じており、その理由は不明である。探索的解析かつサブグループ内の症例数が限られるため、最終解析の結果に注目する必要がある。
4. この結果をもとにした実臨床での考え方
- MMR状態を問わず、進行・再発子宮体癌の一次治療としてTC療法にペムブロリズマブを上乗せする意義がPFSで示された。特にdMMRでは効果が顕著(ハザード比0.34)。
- 一方でOSは現時点で有意差が示されておらず、データも未成熟のため、「生存期間の延長」まで確定したとは言えない。今後のアップデートに注意が必要。
- 本試験ではPD-L1発現(CPS)の有無にかかわらずPFSの改善傾向が見られたため、少なくとも現時点では、PD-L1発現を理由にペムブロリズマブの上乗せを一律に除外する根拠は乏しい。
- MMR状態の確認は、治療選択のみならず予後予測・効果予測の観点からも必須であり、治療開始前にMMR(またはMSI)検査を行うことが前提となる。
- 併用期(6サイクル)終了後も最大14サイクル(約2年間)の維持療法が続くため、免疫関連有害事象(甲状腺機能障害、肺臓炎、大腸炎など)の長期的な管理と、患者への事前説明が重要になる。
5. 関連する試験
DUO-E試験
進行・再発子宮体癌を対象に、TC療法へのデュルバルマブ(抗PD-L1抗体)の上乗せ(doublet regimen)、およびデュルバルマブ+オラパリブの上乗せ(triplet regimen)を検証した試験。MMRステータスによらない全体集団が解析対象だが、TPS(tumor proportion score)によるPD-L1測定が陰性の場合は、doublet・tripletのいずれもTC療法に対する上乗せ効果が乏しい可能性が指摘されている。KEYNOTE-868試験のサブグループ解析(CPSを使用、PD-L1の有無によらず効果あり)とは測定指標(TPS vs CPS)も異なるため、単純な比較はできない点に注意が必要である。
RUBY試験
同様の集団を対象に、TC療法に抗PD-1抗体ドスタルリマブを上乗せする意義を検証した第Ⅲ相試験。KEYNOTE-868試験・DUO-E試験とあわせて、進行・再発子宮体癌の一次治療における「化学療法+免疫チェックポイント阻害薬」の複数のRCTを構成している。
試験ごとに異なるサブグループ解析(MMR状態、PD-L1発現など)の結果が報告されており、今後こうした議論を通じて、子宮体癌領域でもプレシジョン・メディシンがさらに進展していくことが期待される。
参考文献
- Eskander RN, Sill MW, Beffa L, et al. Pembrolizumab plus chemotherapy in advanced endometrial cancer. N Engl J Med. 2023;388(23):2159-2170.
- Pembrolizumab plus chemotherapy in advanced or recurrent endometrial cancer: overall survival and exploratory analyses of the NRG GY018 phase 3 randomized trial. Nat Med. 2025.
- U.S. Food and Drug Administration. FDA approves pembrolizumab with chemotherapy for primary advanced or recurrent endometrial carcinoma. June 17, 2024.
- MSD Connect. NRG-GY018/KEYNOTE-868試験(キイトルーダ®子宮体癌 臨床成績).
重要な注意:本記事はAIの支援を得て、論文情報およびご提供いただいた解説をもとに作成したまとめノートです。レジメンの用量・投与間隔・適応判断を含め、実臨床での使用前には必ず一次資料(原著論文・添付文書・最新のガイドライン)を確認し、執筆者ご自身の目で最終確認をお願いします。


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