局所進行子宮頸癌に対する標準治療である同時化学放射線療法(CCRT)に、免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブを上乗せする意義を検証したKEYNOTE-A18試験について、実臨床で使える形にまとめました。
1. この試験が考案された背景
局所進行子宮頸癌の標準治療は、1999年のGOG120試験でシスプラチン併用同時化学放射線療法(CCRT)が放射線単独療法より優れることが示されて以来、長らくCCRTが標準治療の位置づけにありました。
しかし、その後約25年間、CCRTに他の薬剤・治療法を追加してもPFS・OSをさらに改善するという結果は得られていませんでした(後述のOUTBACK試験など)。一方、進行・再発子宮頸癌に対しては、免疫チェックポイント阻害薬(ペムブロリズマブ)の有効性がKEYNOTE-826試験等で既に示されつつありました。
そこで、「根治を目指す局所進行子宮頸癌の治療段階から免疫チェックポイント阻害薬を導入すれば、CCRT単独を上回る治療成績が得られるのではないか」という仮説のもとに計画されたのがKEYNOTE-A18試験(ENGOT-cx11/GOG-3047)です。
2. 試験概要
対象
未治療※1のFIGO 2014進行期分類のⅠB2〜ⅡB期※2(リンパ節転移陽性)又はⅢ〜ⅣA期※3(リンパ節転移陽性又は陰性)の局所進行子宮頸癌患者※4 1,060例(国際共同治験、日本人90例を含む)。組織型:扁平上皮癌、腺癌、腺扁平上皮癌/ECOG PS 0〜1。
- ※1 未治療:子宮頸癌に対する根治的手術、放射線治療又は全身療法を受けておらず、かつ免疫療法による治療歴のない患者
- ※2 ⅠB2〜ⅡB期:病巣が4cmを超えるもの、又は臨床的に明らかな病巣が子宮頸部を超えて広がっているが骨盤壁又は腟壁下1/3には達していないもの
- ※3 Ⅲ〜ⅣA期:腟壁浸潤が腟壁下1/3にあるが骨盤側壁にまでは達していないもの、骨盤側壁にまで達しているもの若しくは水腎症や無機能腎を認めるもの、又は隣接する骨盤内臓器に浸潤があるもの
- ※4 FIGO 2018進行期分類のⅢ〜ⅣA期に該当
FIGO2014進行期分類 → FIGO2018進行期分類の読み替え
| FIGO 2014進行期分類に基づく本試験の対象患者 | FIGO 2018進行期分類に基づく分類 |
|---|---|
| ⅠB2〜ⅡB期、リンパ節転移陽性 | ⅢC期に該当 |
| Ⅲ〜ⅣA期、リンパ節転移陽性又は陰性 | Ⅲ〜ⅣA期に該当 |
【用語メモ】覚え方のコツ
FIGO2018から「リンパ節転移」が単独でⅢ期(ⅢC期)に組み入れられたため、FIGO2014でⅠB2〜ⅡB期でもリンパ節転移があればFIGO2018ではⅢC期に繰り上がる。つまり本試験対象は、腫瘍の局所進行度(2014分類のⅢ〜ⅣA期相当)か、リンパ節転移の有無(2018分類でⅢC期になるもの)のどちらかを満たす「予後不良因子を持つ局所進行子宮頸癌」と考えると整理しやすい。
リンパ節転移陽性の定義(適格基準)
a) FIGO2014進行期分類のⅠB2〜ⅡB期(リンパ節転移陽性):以下に該当する骨盤リンパ節転移又は傍大動脈リンパ節転移を第1腰椎頭側を超えない範囲で有していること。
以下のいずれかの基準を満たす骨盤リンパ節転移:
- 生検により病理組織学的に確認された骨盤リンパ節転移(転移陽性リンパ節の切除が記録されている場合も、局所に評価可能な病変を有する局所進行子宮頸癌患者は適格とする)
- MRI又はCTで確認された2つ以上の骨盤リンパ節転移(短径が1.5cm以上)
- PET-CTでStandard Uptake Value(SUV)(max)が2.5以上を示す2つ以上の骨盤リンパ節転移
以下のいずれかの基準を満たす傍大動脈リンパ節転移:
- 生検により病理組織学的に確認された傍大動脈リンパ節転移(転移陽性リンパ節の切除が記録されている場合も、局所に評価可能な病変を有する局所進行子宮頸癌患者は適格とする)
- MRI又はCTで確認された1つ以上の傍大動脈リンパ節転移(短径が1.5cm以上)
- PET-CTでSUV(max)が2.5以上を示す1つ以上の傍大動脈リンパ節転移
b) FIGO2014進行期分類のⅢ〜ⅣA期(リンパ節転移陽性又は陰性)
試験デザイン(レジメン)
国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第Ⅲ相試験。以下の2群に1:1で割り付け。
| ペムブロリズマブ+CCRT群 | プラセボ+CCRT群 | |
|---|---|---|
| 導入・同時期 | ペムブロリズマブ200mg 3週毎×5サイクル+CCRT | プラセボ+CCRT(同一スケジュール) |
| 化学放射線療法 | シスプラチン毎週投与(最大6サイクル)+外照射+腔内照射(同一) | 同左 |
| 維持療法 | ペムブロリズマブ400mg 6週毎×15サイクル | プラセボ(同一スケジュール) |
| 総投与期間 | 計20サイクル・約2年間 | 同左 |
主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)(副次評価項目に安全性等)。
3. 結果
KEYNOTE-A18試験は複数回の中間解析・最終解析を経て報告されており、追跡期間が延びるにつれてハザード比が変動している点に注意が必要である。
初回PFS解析(第1回中間解析)
- PFSハザード比:0.68(95%CI 0.56–0.84)
- 36か月PFS率:ペムブロリズマブ群69.3% vs プラセボ群56.9%
OS中間解析
- 追跡期間中央値29.9か月時点、OSハザード比:0.67(95%CI 0.50–0.90、p=0.0040)
- 36か月OS率:ペムブロリズマブ群82.6% vs プラセボ群74.8%
最終解析
- 追跡期間中央値41.9か月時点
- PFSハザード比:0.72(95%CI 0.59–0.87)
- OSハザード比:0.73(95%CI 0.57–0.94)
- 36か月OS率:ペムブロリズマブ群81.8% vs プラセボ群74.4%
【用語メモ】なぜ解析のたびにハザード比が変わるのか
臨床試験、特に大規模な第Ⅲ相試験では、あらかじめ定められた時点(症例数・イベント数・追跡期間)ごとに複数回の解析(中間解析→最終解析)を行うことが多い。追跡期間が延びるほど、初期の効果が薄まったり、逆により明確になったりすることがあり、ハザード比が回によって変動するのは珍しいことではない。臨床医としては「どの時点の解析結果か」を意識して数字を引用することが重要である。
安全性
- 両群ともグレード3/4の有害事象が高頻度に認められた(CCRT自体の毒性が背景にあるため)
- 有害事象による治療中止:ペムブロリズマブ群18.8% vs プラセボ群13.0%
- 治療関連死:両群とも各2例(0.4%)
- 免疫関連有害事象(甲状腺機能異常、下垂体炎、肺臓炎など)がペムブロリズマブ群で観察された
4. この結果をもとにした実臨床での考え方
- GOG120試験(1999年)以来25年ぶりに、局所進行子宮頸癌の根治的治療でPFS・OSを改善する治療法が示された、という歴史的な意義がある。
- ほぼ全ての事前規定サブグループで一貫した有効性が示されており、特定の患者層に限定せず高リスク局所進行子宮頸癌の新たな標準治療選択肢として位置づけられる。
- 一方で、免疫関連有害事象の管理(内分泌障害・肺臓炎等の早期発見)や、有害事象による治療中止率がやや高い点を踏まえ、患者の全身状態・自己免疫疾患の既往等を考慮した適応判断が必要。
- 総投与期間が約2年間と長期に及ぶため、患者への事前説明とアドヒアランス維持の工夫が実臨床上重要になる。
5. 関連する試験
GOG120試験(1999年)
局所進行子宮頸癌に対して、シスプラチン併用CCRTが放射線単独療法より有意に優れることを示した試験。以後25年間、この枠組み(シスプラチンベースのCCRT)が標準治療であり続けた。KEYNOTE-A18試験の対照群(プラセボ+CCRT)は、この試験が確立した標準治療そのものにあたる。
OUTBACK試験
CCRT終了後に補助化学療法(カルボプラチン+パクリタキセル)を追加する意義を検証した試験。900例が登録されたが、補助化学療法群と対照群で5年生存率(71% vs 72%)・PFS(61% vs 63%)に有意差はなく、むしろ毒性が増加する結果となった。「CCRTに単純に治療を足せば良くなるわけではない」ことを示した重要な陰性試験であり、KEYNOTE-A18試験のように作用機序の異なる薬剤(免疫チェックポイント阻害薬)を組み合わせる意義を際立たせる対比になる。
CALLA試験
KEYNOTE-A18試験と同様のコンセプトで、別の免疫チェックポイント阻害薬(デュルバルマブ)をCCRTに上乗せする意義を検証した試験(700例、バイオマーカー非選択の全例対象)。しかし主要評価項目のPFSを有意に改善できず、陰性試験に終わった。同じ「CCRT+免疫チェックポイント阻害薬」というコンセプトでも、薬剤や試験デザインによって結果が分かれた点は、KEYNOTE-A18試験の結果を解釈するうえで重要な対比材料になる。
参考文献
- Lorusso D, et al. Pembrolizumab plus chemoradiotherapy for high-risk locally advanced cervical cancer (ENGOT-cx11/GOG-3047/KEYNOTE-A18). N Engl J Med. 2024.
- Lorusso D, et al. Pembrolizumab or placebo with chemoradiotherapy followed by pembrolizumab or placebo for newly diagnosed, high-risk, locally advanced cervical cancer: overall survival results. Lancet. 2024.
- Pembrolizumab with chemoradiotherapy in patients with high-risk locally advanced cervical cancer: Final analysis results of KEYNOTE-A18. J Clin Oncol. 2025 (ASCO 2025, LBA5504).
- MSDコネクト.KEYTRUDA子宮頸癌 KEYNOTE-A18臨床成績.
- Mayadev J, et al. Durvalumab versus placebo with chemoradiotherapy for locally advanced cervical cancer (CALLA): a randomised, double-blind, phase 3 trial. Lancet Oncol. 2023.
- Mileshkin LR, et al. Adjuvant chemotherapy following chemoradiotherapy as primary treatment for locally advanced cervical cancer versus chemoradiotherapy alone (OUTBACK): a phase 3 trial. Lancet Oncol. 2023.
重要な注意:本記事はAIの支援を得て、公開されている論文・企業情報等をもとに作成したまとめノートです。KEYNOTE-A18試験は複数回の中間解析・最終解析が報告されており、引用元によって数値が異なる場合があります。レジメンの用量・投与間隔・適応判断を含め、実臨床での使用前には必ず一次資料(原著論文・添付文書・最新のガイドライン)を確認し、執筆者ご自身の目で最終確認をお願いします。特にレジメン情報は必ず院内プロトコルおよび最新添付文書と照合してください。


コメント