KEYNOTE-B96(ENGOT-ov65)試験:プラチナ抵抗性再発卵巣癌に対するペムブロリズマブ+weekly paclitaxel

KEYNOTE-B96のアイキャッチ 卵巣がん

2026年9月16日、抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)に「白金系抗悪性腫瘍剤抵抗性の再発卵巣癌」の適応が追加されました。承認の根拠となった国際共同第Ⅲ相試験、ENGOT-ov65/KEYNOTE-B96試験について、日本婦人科腫瘍学会(JSGO)会員向け通知(令和8年10月5日付)の内容をもとにまとめました。

KEYNOTE-B96/ENGOT-ov65試験の概要図(対象643例、ペムブロリズマブ+weekly パクリタキセル±ベバシズマブ vs プラセボ併用、全患者集団のPFS HR 0.70・OS HR 0.82)
KEYNOTE-B96/ENGOT-ov65試験の概要(PFSは第1回中間解析、OSは最終解析)

1. 適応追加のポイント

  • 承認日:2026年9月16日(製造販売:MSD株式会社)
  • 追加された適応:白金系抗悪性腫瘍剤抵抗性の再発卵巣癌
  • 根拠試験:ENGOT-ov65/KEYNOTE-B96試験(ペムブロリズマブ+weekly paclitaxel±ベバシズマブ)
  • JSGOは、使用に際して最新の電子添文、適正使用ガイド、最適使用推進ガイドライン等の確認を求めている

2. 試験概要

対象

  • 組織学的に確認された上皮性卵巣癌・卵管癌・原発性腹膜癌(高異型度漿液性または漿液性優位、低異型度漿液性、類内膜(グレード不問)、悪性ミュラー管混合腫瘍(癌肉腫)、明細胞癌)
  • 白金製剤併用化学療法を少なくとも1レジメン含む、1または2レジメンの全身療法歴あり
  • 直近の白金製剤最終投与後6ヵ月以内に画像上の疾患進行を認めた症例
  • ECOG performance status 0または1

デザイン

国際共同、無作為化、プラセボ対照、二重盲検、第Ⅲ相試験。643例をペムブロリズマブ併用群322例:プラセボ併用群321例 = 1:1に無作為割付した。

治療

  • ペムブロリズマブ(またはプラセボ):400 mg、6週間間隔(Q6W)、最大18サイクル
  • パクリタキセル:80 mg/m²、毎週(QW)(各3週間サイクルの day 1, 8, 15)
  • ベバシズマブ(併用する場合):10 mg/kg、2週間間隔(Q2W)。本邦では15 mg/kgの3週間間隔(Q3W)も選択可。併用の有無は無作為化前に治験担当医師が決定
  • 疾患進行、許容できない有害事象、その他の中止理由が生じるまで投与を継続(ペムブロリズマブ/プラセボのみ最大18サイクル)
  • パクリタキセルに対する過敏症反応で投与を継続できない場合は、ドセタキセル75 mg/m²(国内の開始用量は70 mg/m²)Q3Wの使用が許容された

評価項目と解析

  • 主要評価項目:無増悪生存期間(PFS)
  • 主な副次評価項目:全生存期間(OS)、患者報告アウトカム、安全性
  • 探索的評価項目:奏効率(ORR)
  • PFS・OSはCPS≧1集団と全体集団について検定し、多重性はMaurer and Bretzのgraphical approachで調整

投与スケジュール(6週間を1単位として)

ペムブロリズマブが6週間隔、パクリタキセルが毎週、ベバシズマブが2週間隔と投与間隔が異なるため、6週間を1つのまとまりとして考えると整理しやすい。ペムブロリズマブの投与日(6週ごと)には3剤(ベバシズマブ併用時)が揃い、その間は毎週パクリタキセルを投与し、2週・4週にベバシズマブを追加する。

時点ペムブロリズマブパクリタキセルベバシズマブ(併用時)
開始(day 1)○○○
1週(day 8)―○―
2週(day 15)―○○
3週(day 22)―○―
4週(day 29)―○○
5週(day 36)―○―

6週目(day 43)は次の6週間の開始にあたり、再び3剤を投与する。ベバシズマブを使用しない場合は、ペムブロリズマブ(6週ごと)とパクリタキセル(毎週)のみとなる。

KEYNOTE-B96の実際の投与スケジュール(ペムブロリズマブ6週ごと、パクリタキセルDay 1・8・15、ベバシズマブ2週ごと)
KEYNOTE-B96の投与スケジュール
  • 画像評価は、無作為割り付けから54週目までは9週間間隔、その後は12週間間隔で実施された
  • 実臨床では患者の状態・有害事象に応じた延期・休薬・減量を検討する
  • ※ 用量・用法は試験での設定である。実臨床では電子添文・適正使用ガイドで必ず確認すること。

3. 患者背景

2021年12月13日~2023年7月3日に643例が無作為化された(ITT:併用群322例/プラセボ群321例、安全性解析対象:320例/318例)。

項目ペムブロリズマブ併用群プラセボ併用群
年齢中央値62歳61歳
高異型度漿液性癌278例(86.3%)275例(85.7%)
前治療2レジメン200例(62.1%)207例(64.5%)
本試験でベバシズマブ使用235例(73.0%)236例(73.5%)
ベバシズマブ前治療歴149例(46.3%)146例(45.5%)
PARP阻害薬前治療歴112例(34.8%)123例(38.3%)

4. 有効性

評価項目ペムブロリズマブ併用群プラセボ併用群HR(95%CI)
PFS中央値(第1回中間解析)8.3ヵ月(7.2~8.6)6.4ヵ月(6.2~8.1)0.70(0.58~0.84), p<0.0001
OS中央値(最終解析)17.7ヵ月(15.2~19.2)14.0ヵ月(12.5~15.6)0.82(0.69~0.97), p=0.0115
ORR(測定可能病変あり、探索的)50.4%(44.3~56.4)41.1%(35.3~47.1)―
  • PFSのイベント数は併用群231例(71.7%)、プラセボ群253例(78.8%)。全体集団でPFSは統計学的に有意に延長し、事前規定の検証的解析の基準を満たした
  • OSの死亡イベント数は併用群247例(76.7%)、プラセボ群266例(82.9%)。全体集団でOSも統計学的に有意に延長した
  • 白金抵抗性再発卵巣癌で、PD-1阻害薬の上乗せによりOSの有意な延長が示された点が重要である
  • なお、本通知にはCPS≧1集団の結果は記載されていない(原著論文で確認)

5. 安全性

項目ペムブロリズマブ併用群(n=320)プラセボ併用群(n=318)
副作用(全Grade)313例(97.8%)303例(95.3%)
Grade 3以上の副作用217例(67.8%)176例(55.3%)
重篤な副作用107例(33.4%)63例(19.8%)
投与中止に至った副作用120例(37.5%)90例(28.3%)
死亡に至った副作用4例(1.3%)5例(1.6%)

主な副作用(全Grade/Grade 3以上)

事象併用群プラセボ群
貧血159例(49.7%)/38例(11.9%)134例(42.1%)/25例(7.9%)
末梢性ニューロパチー124例(38.8%)/17例(5.3%)99例(31.1%)/19例(6.0%)
脱毛症121例(37.8%)/0例108例(34.0%)/0例
疲労113例(35.3%)/17例(5.3%)105例(33.0%)/19例(6.0%)
悪心100例(31.3%)/4例(1.3%)87例(27.4%)/4例(1.3%)

免疫関連など特に注目すべき有害事象

併用群126例(39.4%)、プラセボ群60例(18.9%)に認められ、Grade 3~5はそれぞれ38例(11.9%)、11例(3.5%)であった。

事象併用群(Grade 3~5)プラセボ群(Grade 3~5)
甲状腺機能低下症58例(18.1%)(0例)19例(6.0%)(0例)
Infusion reaction19例(5.9%)(6例、1.9%)15例(4.7%)(2例、0.6%)
甲状腺機能亢進症16例(5.0%)(0例)2例(0.6%)(0例)
副腎機能不全15例(4.7%)(7例、2.2%)0例
肺臓炎15例(4.7%)(2例、0.6%)6例(1.9%)(3例、0.9%)
大腸炎14例(4.4%)(10例、3.1%)4例(1.3%)(1例、0.3%)

死亡に至った副作用は、併用群で大腸炎、間質性肺疾患、急性骨髄性白血病、腸管穿孔が各1例、プラセボ群で心不全1例、腸管穿孔および大腸穿孔が各2例であった。

6. 使用上の注意(JSGO通知より)

  • 対象集団の確認:本試験の対象は、1または2レジメンの全身療法歴を有し、直近の白金製剤最終投与後6ヵ月以内に進行した患者である。初回治療中または初回白金製剤最終投与後28日以内に進行した白金製剤不応性の卵巣癌患者は除外されていた
  • 併用化学療法:本試験の化学療法はweekly paclitaxelであり、ペムブロリズマブをweekly paclitaxel以外の化学療法と併用した場合の有効性・安全性は評価されていない
  • ベバシズマブ:使用は無作為化前に決定されたが、本試験はベバシズマブの独立した寄与を評価するよう設計・検出力設定されたものではない
  • 安全性:ペムブロリズマブ、weekly paclitaxel、ベバシズマブ(併用時)に関連する有害事象に留意し、特に免疫関連有害事象を早期に把握して、電子添文・適正使用ガイド等に従って対応する
  • PD-L1:米国・欧州ではPD-L1陰性の集団に対しては現時点で承認・推奨されていない。本邦での適応条件は電子添文および最適使用推進ガイドラインで確認すること

7. まとめ

  • 白金製剤最終投与後6ヵ月以内に進行した(白金抵抗性)再発卵巣癌に対し、ペムブロリズマブ+weekly paclitaxel(±ベバシズマブ)は、プラセボ併用に比べてPFS(HR 0.70)、OS(HR 0.82)を有意に延長した
  • 一方でGrade 3以上の副作用、重篤な副作用、投与中止に至った副作用はペムブロリズマブ併用群で多く、免疫関連有害事象の管理が重要である
  • 初回治療中・初回白金製剤投与後28日以内の進行(白金製剤不応性)は対象外であり、対象集団を確認したうえで結果を解釈する必要がある

関連記事:KEYNOTE-868試験(進行・再発子宮体癌)、KEYNOTE-A18試験(局所進行子宮頸癌)

参考文献

  1. 日本婦人科腫瘍学会. ペムブロリズマブ(キイトルーダ®)の「白金系抗悪性腫瘍剤抵抗性の再発卵巣癌」に対する適応追加と使用上の注意点について(会員向け通知). 令和8年10月5日.
  2. Colombo N, et al. Pembrolizumab plus weekly paclitaxel in platinum-resistant recurrent ovarian cancer (ENGOT-ov65/KEYNOTE-B96): a multicenter, randomized, double-blind, phase 3 study. Lancet. 2026;407:1525-1537.
  3. Colombo N, et al. Final analysis results from ENGOT-ov65/KEYNOTE-B96. ESGO 2026 oral presentation.
  4. キイトルーダ®点滴静注 電子添文、適正使用ガイド、最適使用推進ガイドライン
  5. MSD Connect. KEYNOTE-B96(キイトルーダ®卵巣癌 臨床成績). 試験概要・投与スケジュール.

重要な注意:本記事はAIの支援を得て、JSGO会員向け通知をもとに作成したまとめノートです。レジメンの用量・投与間隔・適応判断を含め、実臨床での使用前には必ず一次資料(原著論文・電子添文・最新のガイドライン)をご確認ください。内容については、執筆者ご自身の目で最終確認をお願いします。

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